ゲーム会社では様々な雇用形態や労働条件がありますが、今回はゲーム会社で採用されていることの多い
裁量労働制について基本的な仕組みと注意点について解説していきます。
裁量労働制とは?
裁量労働制は、
実際の労働時間に関係なく、決まった時間分働いたとみなす制度です。
つまり、
みなし労働時間が8時間と設定されている場合は、1日10時間働いても1日5時間働いても、その日は8時間働いたと記録されます。そのため、時間外労働による残業代が発生しなくなります。
(*1)
*1……正確には、後述する割増賃金は裁量労働で決まっているお給料とは別に追加で払わないといけません。
時間=成果とならないようなクリエイティブ系企業等で導入されている事が多い制度で、会社と労働者の間で締結される36協定と呼ばれる労使協定にてみなし時間等を決定しています。
正しい使い方としては、労働時間よりも成果重視の業務をおこなう人が本人の裁量で時間を調整して成果を出すといったものです。
例としては、あるプログラムを2週間で作る際、1週目に10時間ずつ取り組んだことでほぼ完成したので、2週目は毎日4時間の勤務だったとしても、毎日8時間勤務した事として処理されます。
また、残業代も基本は出ませんが、企業は実際の勤怠管理を必ずおこなう必要があり、労働時間が長時間に及ぶことで健康に悪影響が無いように時間管理をする義務があります。
裁量労働制の問題点
裁量労働制は、このように
本人の裁量によって、労働者本人が自分の意志で労働時間をコントロールすることを会社が認めている前提で成立している制度です。本人に自分の業務内容や業務時間に対しての裁量が無い場合でも、残業代を払わない事を目的として裁量労働制を導入しているケースが様々な業界で発生しています。
また、裁量労働制には専門型裁量労働制と企画型裁量労働制の2種類があり、ゲーム系の仕事では専門型裁量労働制が適用される事が多いです。
この専門型裁量労働制も業務の遂行の手段及び時間配分の決定を労働者に委ねる必要があり、会社が手段や時間配分について具体的に指示できないような業務の場合に限られます。
例えば、
ゲームの仕事であっても原則的に営業時間中に対応するようなカスタマーサポートや、本人の裁量で業務時間を調整できないような業務の場合は適用対象外となりますが、このような業務に適用して運用されてしまっているケースもあります。
深夜残業や休日勤務が発生した場合は、裁量労働制であっても割増賃金(*2)の支払いが必要になりますが、勤怠管理を正しくおこなっていないような会社だと残業代の未払いが発生していることも。
*2……割増賃金は
夜22時~朝5:00の深夜に働いた場合→25%アップ
会社の休日に働いた場合→35%アップ
が法律上の割増賃金として定められていますが、割増賃金に関しては詳しくは厚生労働省のサイトをご覧ください。
サイト内の記述には「裁量労働の場合」の記載はありませんが、割増賃金は労働者に給料として労働の対価を払う場合には、原則発生するものです。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei07.html
また、裁量労働制は何時間働いても残業にならないという点から、人によってはダラダラ仕事してしまいやすいといった問題が発生する場合もあります。
ゲーム業界での裁量労働制
ゲーム会社はどうしても残業が多くなりやすく、裁量労働制を採用している事も多いです。
特に納期直前等は残業過多になりやすいものですが、
開発系の会社の場合はその代わりに納期後にリフレッシュ休暇やマスターアップ休暇といった特別休暇を付与しているケースも多くあり、通年での業務時間を調整しているケースもあったりします。
裁量労働制は、先にお伝えしたとおり、原則として成果重視の仕事で本人に業務の裁量があり、労働時間の調整を会社が認めている場合に適用できるものであり、会社・従業員双方にとってメリットもあればデメリットもあるものです。
筆者が経営しているゲーム会社では、元々は裁量労働制を導入していましたが、勤怠管理やパフォーマンスの面でデメリットの方を多く感じたため、裁量労働制を廃止し、みなし残業時間分の賃金を予め給料として支給する形に変更しています。
基本的には制度として正しく運用されているケースが多いと思いますが、上記の問題点にあるような誤った運用をされてしまっているケースも業界問わずあるため、裁量労働制を導入している会社の場合は、実際の残業時間やその他の福利厚生などが確認できるのであれば調べておくと良いかもしれません。
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