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[取材]東京ゲームショウ出展!アンリアルチャレンジ!@アミューズメントメディア総合学院 (TGS作品発表)

2016-10-03 17:36:00
8月某日にアミューズメントメディア総合学院にお邪魔してアンリアルチャレンジ!の中間発表を前回の記事でお届けしていたが、「あのあと結局どうなったの?」が気になるところだと思う。今回は産学共同プロジェクトとしてアミューズメントメディア総合学院で行われている「Unrealチャレンジ!」でのUnrealEngine4(以下UE4)を使ったゲーム開発の中間発表以降の変化についてお伝えしていきたい。

前回の様子はこちら→
[取材]アンリアルチャレンジ!@アミューズメントメディア総合学院 (中間発表)

前回から約一ヶ月後の9月15日~18日、生徒たちは制作したゲームを引っさげ、東京ゲームショウ(以下TGS)の大舞台に出展することと相成っていた。
 


▲東京ゲームショウからメインホールの様子。
2タイトルの展示があったインディブースはメインホールから離れた場所にあったが、概ね人通りは常時こんな具合だ。



 
この写真の具合に、TGSでは展示をしていたインディブースを含めすべてが大勢の人でごった返す。
専門学校等の展示は将来ゲームを作りたいな、と思っている高校生などの学生さんが自分の将来のきっかけになったりすることもある。もし将来ゲームクリエイターを目指すなら、次回機会があればインディブースを含め、学校展示等もぜひ回ってみると良いだろう。

 
 
目次
 

おさらい、「Unrealチャレンジ!とは?」

まず、前回の記事を読んでいる人はもう分かってるよ!というところだと思うが、はじめての方向けに軽く補足すると、「Unrealチャレンジ!」とは、アミューズメントメディア総合学院で行われている、Unreal Engine4を使って学生数人の開発チームが商用ゲームを開発するプロジェクトであり、最新のゲーム開発をリアルに学ぶ教育カリキュラムである。

「Unrealチャレンジ!」の開発は4月からはじまっており、前回の取材は8月某日、およそ開始から3ヶ月ほど経過した時点の制作内容を中間発表として、取材兼講評役のひとりで参加させていただいた時点の情報を記事としてまとめさせてもらっていた。

8月時点では学生たちが制作にあたっていた2タイトルとも、それぞれ相応の課題を残していた。
「Unrealチャレンジ!」は、制作にあたっているのが学生というだけで、最終目標の一つに「作ったゲームを市販する」という条件が課せられている。
つまり、「売ることができる」というクオリティまで持っていかないといけないので、よくある学校の授業での制作課題のように「期日内に提出すれば大丈夫」というものではないのだ。

大まかに、この東京ゲームショウ2016での出展前までに中間発表で見ていたバージョンでの課題点を見ていこう。


■アクションゲームの「カニマンVSメカモンキー」の課題
 

▲中間発表時点のカニマン。
「カニマンVSメカモンキー」は「さるかに合戦」をベースにした世界設定で、「カニマン」を主人公としたスタイリッシュアクション。

 ・アクションゲームとしてのメリハリ(必殺技、演出)をもっと出す
 ・世界観とのマッチング(カチカチ山らしさと、ギミックへの落とし込み)をよりそのゲームらしく



■世界観を楽しむタイプの「Rainbow step」の課題

▲中間発表時点のRainbow step。

「Rainbow step」は虹に乗りながら世界から雨雲を消していき、世界を晴天にしていくゲーム。
 ・没入感を妨げる迷子問題(マップが広い、ゲームとして何が手がかりになるかわかりづらい)
 ・世界に触れる喜びを呼び覚ます演出の不足(仕掛けをトイた時の反応やエフェクトが希薄)


他にも色々と販売することを考えたときには細かい問題があるのだが、詳細は是非前回の様子を見てもらいたい。

前回の様子はこちら→
[取材]アンリアルチャレンジ!@アミューズメントメディア総合学院 (中間発表) 

この、上に上げたような課題の中で「何を解決して何を解決しないか」または「解決のときにどんな手段を使うか」というのも、開発者の技量として大きなポイントになるところだが、「そのゲームらしく尖った部分は残しつつ」かつ「(操作のしづらさやゲームそのもの違和感などに気を取られず)プレイヤーが余分な事を気にせず遊びやすいように作るか」に注力しないといけないのだ。

そのゲームらしさを考えたときには「指摘されたところをとにかく全部言うとおりに直す」ことは場合によってはそのゲームらしさを潰してしまうことになることもある。「操作はしやすくなった」「分かり易くはなった」けど、それが面白いかどうかはまた別の問題だ。
ちなみに、この問題はプロになってもつきまとうもので、「遊びづらさ」や困難を訴えるプレイヤーの声は注意深く聞くべきだが、そのままの形でゲームに反映してゲームがゲームとして成り立つかどうかはよく吟味すべきところだ。

もちろん、前回の講評に立ち会った開発者たちも「面白くなるかどうか」のポイントを見据えた上での指摘を行ってはいるが、それをどのように実装したかは各チームの学生たちの技量によるところが大きい。
実際に制作にあった学生たちの指導で、多くの講師の方の尽力も陰に日向にあったものと察せられるが、両チームとも素晴らしい仕上がりとなっていたので、詳細をそれぞれ追って見ていこう。
 

■アクションゲームとして一皮むけたカニマン

 

▲中間発表時点ではなかったオープニング画面も追加されている。


▲中間発表時点ではこんな具合だ(あっさり風味)。

さてスタイリッシュさるかに合戦アクション、「カニマンVSメカモンキー」の変貌ぶりを見ていこう。

 ・アクションゲームとしてのメリハリ(必殺技、演出)をもっと出す
 ・世界観とのマッチング(カチカチ山らしさと、ギミックへの落とし込み)をよりそのゲームらしく

課題となっていたこの2点だが、分かり易くするために比較して見ていこう。


■Before
若干、地味で没個性な感じの絵面になっており、旧バージョンでは技のバリエーションも少なかったのだが…

▲敵を腕で薙ぎ払い、盤上からど突き落とす。


▲中間発表時点の必殺技。


■After
新バージョンでは、画面を見ただけでゲームが全体的に「良い緊張感で締まった」感じの印象になっている。
まずはじめに、当たると一定時間行動の自由が効かなくなってしまうレーザー砲の照射が迫ってくる様子や、格子状に錯綜するバリア(これも当たるとペナルティが起きる)が見れるだろう。

ゲーム的な表現に慣れている人だと、「あ、当たったらヤバイ奴だな」とパッと見て伝わる見た目になっていることもわかるだろう。
それ以外にも色使いやエフェクトであったりも質感が増し、それぞれのオブジェクトを作り込んでいくことで画面全体が分かりやすくなり、ゲームの絵面に説得力やらしさが増したように見える。
 

▲レーサーの照射は回転しながら迫ってくるので、ジャンプで避ける。


▲絵面からも緊迫感が伝わる。


なお、メカモンキーと戦うのに気を取られていると、これらの罠は両方共いやらしいタイミングでせまってくるのだが、モンキーたちを振り払うための必殺技や手段も前作より追加されているので、プレイヤーが操作に慣れれば上手にそのあたりも躱せるようになるのだ。
 

▲ピンチのときには仲間の臼を召喚…!!

▲板面を力強く揺るがす臼の衝撃波で敵を一層だ!!


ごちゃごちゃと囲まれたときは、ええいとどこからか臼を召喚して新必殺技の衝撃波ですべての盤上の敵を薙ぎ払うことができる。
トロフィー機能なども追加されているので、更に深く遊びこませることも想定しているのだろう。

このあたりを見ていくと課題のうちの一つだったアクションゲームとしてのメリハリ(必殺技、演出)をもっと出すところはクリアされているようだが、もう一つの課題であった世界観とのマッチング(カチカチ山らしさと、ギミックへの落とし込み)をよりそのゲームらしくする部分をどう解決していったか見てみよう。

 

▲中間発表時の栗爆弾だ。
ただの丸いオブジェクトだ。



▲黄色いマーカーの先がトゲトゲの焼き栗爆弾。
TSGバージョンでは掴んで投げられる。


▲敵にヒットした焼き栗爆弾。
確実に業火で包んでいるあたり栗もやる気満々。


前回はただの丸い玉だった栗爆弾だが、今回は(少し見づらくなってしまったが)棘がびっしりと生えたイガ栗らしい見た目にパワーアップして登場する。
ステージに設置されているので当然当たらないように避けないといけないのだが、ちゃんと手で持てば持ち運べるすぐれものでもあるのだ。
栗はもともと昔話的にも仲間だったわけだが、ココで栗をひろって投げつけると敵もろともはじけ飛んでくれる。
おとぎ話でも猿を狙うため、囲炉裏から熱されてはじけ飛んでいく鉄砲玉様の生き様を見せつけてくれた栗だが、今作ではその栗らしさきちんと世界観を汲んだ上で攻撃方法として成立している。

それ以外にも細かいところだが、盤面から落ちて即死しないように木の柵が追加になったのは(アクションがスキだけど下手である自分には)嬉しいアップデートだった。

このゲームは「盤面から相手を吹き飛ばし、自分が残れば勝ち」でHPの概念がないのだが、そのかわり中間発表時点では死ぬときは基本常に即死だったわけである。もちろん、盤面の端っこの方に押されている時点でジリジリする勝負はあるわけなのだが、ちょっと避け残っただけで割りとすぐ死んでしまう状態だったのだ。

ゲームモードで難易度の追加となると大改造が必要になってしまうが、ステージ上の設備の追加でこういったところにもちょっとずつアップデートやケアが入っているところが伺えるので、テストプレイをしてこのあたりも変えていったのだろう。
 

▲奥の木の柵は壁。
敵や自分がぶつかると壊れていくので、1回で盤上から度突き落とされなくなった。

ちなみに、TGSバージョンから落ちるときには冬の美味しい風物詩、カニ鍋になる。
ちゃんとエフェクトで汁が飛び散っているのを見たときの「あいつ、無茶しやがって…」という殉職感はじわじわ来るものがある。
 

▲ステージの上から落ちるときはカニ鍋になって爆発四散していく。
 

触れる、世界に響くRainbow Step

続けて、「世界を歩きまわって触れながら、雨ばかりの世界に晴天を広げていく」ゲームである「Rainbow Step」の変化について。

 ・没入感を妨げる迷子問題(マップが広い、ゲームとして何が手がかりになるかわかりづらい)
 ・世界に触れる喜びを呼び覚ます演出の不足(仕掛けを解いた時の反応やエフェクトが希薄)

課題点としてはこの2つが挙げられていたが、こちらも素晴らしい進化を遂げていたので、画面を比較しながら見ていこう。


■オープニング

▲中間発表時。


▲TGS版オープニング。
このあと物語の経緯が要約されたムービーが入る。


中間発表版では、ムービー等はなく、そのままゲームが展開してしまうが、ストーリー説明が言葉でされないので心の準備ができないまま放り出される感があった。
TGS版では、この画面のあと大まかに話の流れを説明するムービーが入るので、おおよそゲームの目的を知ることができた状態で、ユーザーは心の準備ができる、というわけだ。
ムービーはストーリーを直接言葉で読ませない分、ムービーによる物語の描写がその後のプレイの布石になるので非常に大事な要素だといえる。

 

▲中間発表クジラ


▲TGS時点でのクジラとの遭遇


上が中間発表時点の画面だ。中央に薄っすらと過ぎ去っていく鯨がいるのだが、TGS時点ではこれもきちんと手前から向こうによぎっていくところが演出されていた。
そこで物語的に「あれはなんだろう、行ってみよう」というフックを作っていくわけだ。
カメラ視点も変更され、クジラ全体をしっかり写していくことで「これは大事なものですよ」「印象づけたいシーンですよ」というのを丁寧に見せていくわけだ。

ユーザー視点で考えると「あのゲームの~~が印象的だったな」というものは多々あると思うが、基本それらも開発側で「オナは指摘に重要だからちゃんと表現しないといけない」「たっぷり見せよう」と考慮された上で印象づけていくものだ。
こういうところを見ていくと、中間発表時点では「なんとなくいい感じに世界を晴れにしていきたい」から出発してしまっていた印象があったが「どういう世界を見せたいか」がTGS版では際立ってきたところがわかる。

また、画面全体の草や木、背景などの色味や3Dモデルにも注目してもらいたい。
中間発表時点では配置されているものの色使いなどが単調だった部分にきちんとコントラストが付いた状態になっていることがわかるだろう。

このあたりはゲームとしてと言うよりは、画作りの部分で映画のような演出になるのだが、「どうユーザーにそのシーンを印象づけるか」というところだろう。
(UnrealEngine自体がムービー編集など、ゲーム制作以外に映像制作でも非常に扱いやすい作りをしているので、そのあたりの機能もフル活用して作ったと察せられる。)


 

▲中間発表時のモニュメント。
接触で一応光るがささやか。


▲TGS版光るモニュメント。
中央に宿る光は最初やはりひっそりしているのだが…



▲キャラがモニュメントに接触すると…にわかにあたりが光りだす!


▲きらめきが…!
地面からモニュメントを抜けて行く。


▲光は世界へと抜けていき、あたりを照らし始める。


他にも、ステージのギミックなどもだいぶ印象が変わっているのだが、石碑に触れると道がどんどん開いていき、ゲームとして先に進んでいく作りになっているのだが、中間発表時点の元の状態では反応がひっそりとしており、「道が開いた」感が希薄な部分があったのだが、そのあたりも都度全てに対して細かくエフェクトが入っていた。

画像で見てもらえると、より分かりやすいだろう。

「薄暗い世界に光がさす」という叙情的な光景だが、単に明るくするだけだと「それが物語的なドラマを持っています」というところが伝わらないのだが、今回のバージョンアップできちんとゲーム的なドラマチックさを打ち出している。

こういうゲーム的なお約束として、「プレイヤーが触ると音がなる、光る」というものは見た目としては「わ~キレイ!」で終わるかもしれない。
ただし、本質としてはゲーム的なお約束をきちんとなぞって設計し、ゲーム内に入れ込んでおくことに寄って、プレイヤーが「ここを押せば次に進める」「これをあつめれば先にすすめる」「反応があったとワクワクさせる」と学習させ、次に向かわせるために必要なフックの一つとなるわけである。

課題であるうちの一つの世界に触れる喜びを呼び覚ます演出の不足(仕掛けを解いた時の反応やエフェクトが希薄)については、「このワクワク感や先への見通し」をゲーム的なお約束をなぞることで織り込んでいくことで解決していったわけである。

もう一つの課題点としてあげられていた、没入感を妨げる迷子問題(マップが広い、ゲームとして何が手がかりになるかわかりづらい)についてもどうしていったか続けてみていこう。

さて、迷子問題はいかにして解消されたのだろうか。
 

▲中間発表時の蓮の葉っぱの道。


▲TGS時点の蓮の葉の道。
いかにも何かこの先にありそう!

3Dモデルの葉っぱの形自体は変わっていないようなのだが、「道があるところ通れるところを明確にする」ために光の演出を入れてある。

これも前述の「石碑が反応するとキラキラする問題」のように「わ~キレイ」とプレイヤー視点では遊んでいるときに無邪気に思うところだと思うのだが、「主人公キャラが進むルートを他より目立たせる」ことで「行き先は迷わないよね」という状況を作っているわけだ。

プレイする側としては恐らく「光ってるからなんかありそう」と興味を惹かれるところにススッと行ってしまうだけでそんなに意識はしていないと思うのだが、開発者としては遊ぶ側の人にいかに意識させずにすんなり反応してもらうかが大事なところだ。

こういう細かな「プレイヤーが疑問にすら思わない」ように世界を組み立てていくことがゲームへの没入感につながっていくところのひとつになるので、TSG時点のものでだいぶ迷わずブレず、世界を味わう方に専念でき、楽しめるようになったといえるだろう。

一つ一つの進化は本当にささやかに見えるかもしれないが、Rainbow Stepだけではなく、どのゲームも全体を表すための細部へきちんと(完成させられるようにする、という時間と手数との大いなる戦いの中で)こだわっていくこともそのゲームをそのゲームらしくたらしめるところだと言えよう。

 

まとめ

教員としてこの「Unrealチャレンジ!」に関わっておられるアミューズメントメディア総合学院の猪狩氏にもお伺いしたところ、最終的なリリースは11月末頃を予定しているということでまだまだブラッシュアップを続けている状態だ。

しかし、わずか一ヶ月の期間の間に制作に当たった学生たちが周囲のフィードバックを吸収し、大幅にゲームとして進化させていたことについては非常に大きな成果だと言えよう。

特に、タイトルの方向性、遊ばせ方、見せ方などはプロになっても都度悩み、もがいていくところでもあるので、学生のうちからこれだけ真剣にもがくことができるのはこれからも面白いものを作り続けていってくれるだろうと、筆者としても非常に楽しみだ。


 
ライター : ミツヅノ
不定期にゲームの紹介記事や、特集系の記事で出現する「ミツヅノ」です 普段はスマホのゲームを作ったり運...
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