こんにちは、ミツヅノです。
久々の【突撃取材!目指せゲーム業界】インタビューシリーズ、『ガンダムブレイカー3』や『ブラッククローバー カルテットナイツ』などの開発を行うイリンクスさんを2019年初回分として戻ってきました!
※記事のボリュームから前編・後編2本立てでの公開です。前篇を読んで興味を持った方はぜひ後編も一緒にお楽しみください。
▼▼『株式会社イリンクス』インタビュー【後編】はコチラ▼▼
2019年版【目指せゲーム業界】イリンクスの社長にインタビュー!【後編】
インタビュイー:
株式会社イリンクス
代表取締役社長 / プロジェクトマネージャー 田中宏幸氏
インタビュアー:
株式会社シフォン
代表取締役副社長 末広幸子(編集部:ミツヅノ)
会社情報
スケジュールはきちんと立てる、きちんと休む
――――ちょうど梅雨に入りたて、6月の大雨の日に(取材の移動時は奇跡的に小雨に収まっていましたが)、取材に伺ってきました。
ミツヅノ(以下 ミ):ご無沙汰しております!今日はよろしくお願いします!
そして移転おめでとうございます。
――――2019年4月にイリンクスは五反田の現在のオフィスに移転したばかり。
ビルも新しいので、設備もピカピカです!
田中氏:雨の中ありがとうございます、今日、ちょうど雨が降ったこともあってスタッフが結構有給でいないんですよ(笑)
▲代表の田中氏。プログラマとしてゲーム会社勤務を経てイリンクスを立ち上げ、9期目となる。
ミ:いえいえ、ちょうど私の移動時間は運がよかったようで、小雨でした。
有給、いいですね。皆さん、雨足が強くなるのを見越してお休みにする、と。
田中氏:5月末に納品が一度終わったこともあり、有給消化推奨期間なんですよ。
もちろん納期前には忙しい時期があったりもしますが、今は開発初期なのと、次の忙しくなる時期が年末とか……期間が開いているので、その間に何となく休んでいますね。
ミ:さっそく、お伺いさせてください!
一般の媒体だとゲーム作りにどう情熱をかけているかとかを最初に聞くと思うのですが、それはそれでもちろんあると思うんですが、どんなにがむしゃらでもいいコンディションでみんなが働けないといけないですもんね。
今日みたいな雨の日に休もう!という判断ができるのはとてもいいことだと思いますし、とはいえコンシューマーゲームの場合実装ボリュームは今相当大きいので、そんな中お休みをきちんととるための会社の努力もあると思うので、開発スパンのお話を聞かせてください。
コンシューマーの一本の開発期間ってどのくらいなんですか?
田中氏:1本あたり2年から3年ですね。
最近だと、よくあるのが開発2年、運営1年。
運営時はダウンロードコンテンツや、ちょっとした更新、例えばダンジョンなどを作っています。
開発期間は長いですが締切は小まめにあります。そのため、初期に入念に開発スケジュールを作ります。
ミ:イリンクスさんのやっているコンシューマー開発の場合だと、複数ハードの対応とかも当たり前のように入ってくるので、ボリュームもかなり大きいですよね。
その分最初からガツンと長い時間を取っている。
田中氏:そうですね、あと作成した開発スケジュールは元々チームに提示してあるので、いつ忙しくなるというのが事前に分かりやすいかもしれません。1年くらいは見渡せるので、社員側でも心づもりがあって「この時期にまとめて休もう」とか計画して休んでいたりしますね。
飛行機とか、早く予約すると安いらしいですし。
ミ:事前にスケジュールが把握しやすいとはいえ、実際ゲームをよりよくするために機能追加をしたり、仕様変更をしたりということはあると思いますが、その辺も最初の初期開発の期間だとそんなにない感じですか?
田中氏:初期の開発期間中はそんなに急遽何かが起きる、ということは少ないです。ただ、リリースして、運営に入った後はタイミング次第ですね。
ユーザーさんの要望に応じてもっと遊んでもらうために急遽仕様を追加をすることがあります。
――――PONIT
もちろんどの会社もスケジュールを引きながら制作に励んでいるが、コンシューマーゲームの場合開発ボリュームも大きいこともあり、より綿密に計画しながら進めていることが分かりました。この後のお話で、イリンクスの開発スタイルの特徴の一つでもある『計画的に制作を進めるために必ず専属のPMを立てる』ことについて、具体的に計画な工夫や考え方が出てきます。
新卒採用について
▲フロアの様子。各職業ごとに連携しやすいように自然と座席が分かれていっている。
ミ:今社員さんは何人ですか?
田中氏:今37人ですね。
ミ:以前、2016、2017年にインタビューした際に、外注さん入れて1プロジェクトが50人~60人になっていた時期もあったかと思うのですが、今は外注さんはいらっしゃらないんですね。
田中氏:今はちょうどプロジェクトの立ち上げ期なので外注さんはいないです。最初のゲームの土台を作るところは自分たちで進めて、そこから後半の量産のフェーズに入ったときに外注さんにもお願いするともっとフロアに人が増えますね。
あと、これからインターンをMAXで10名くらい入れるのでかなり座席はスカスカです。
ミ:インターン10名ですか! 現行の社員さんの比率を考えると多いですね。
インターンの方たちもそのまま全員採用予定ですか?
田中氏:いえ、ゲーム業界の雰囲気を学んでもらって、その中でもし希望者がいれば面接等をするような感じです。
ミ:イリンクスさんのインターンの場合、チームを組んで彼らだけで何かさせる、という形式ではないんですね。よく、人数をたくさん集める会社だとインターンの人たちだけで期間を区切ってゲームを作ってもらったりするケースもありますが……
田中氏:そういう感じではないですね。
以前の事例だと、例えば開発の終わったタイトルを引っ張り出してきて、「あなたオリジナルの魔法を作ってみて下さい」とかやりました。既にあるソースコードやリソースを解析し、その中で工夫して作る、そういう実際の仕事を体験させるような形式で行っています。
大体これを例年夏休み中にやっています。
ミ:他にも、いろんな採用媒体に情報出されていたりするので、ゲーム系専門学校出身以外の、大学生など幅広く応募がきたりもする時もあると思うのですが、カリキュラムがないところから来られる方の場合だと、選考の時に作品が少なかったりするケースはあったりしませんか?
田中氏:いえ、割と皆さん普通に作品を用意して来られますね。今だと、個人で色々作っている方も多いので、独学で何かしらの作品を用意してご応募いただくケースが多いです。
採用基準は専門卒と変わりませんね。ただ自主的に作品を作っている分、評価は高いです。
例えば、大学の建築学科出身の社員の場合だと、一度不採用だったけどもう1回応募させて欲しい、と2回応募があって採用につながりました。
ミ:2回応募……!
田中氏:2回目の応募の時、作品を見たら1回目よりぐっとクオリティが上がってたんですよね。
再応募までの期間が4ヶ月くらいかな……2月くらいに再度応募があって。
3月に内定を出したので、だいぶぎりぎりで入社が決まりました。4月からはもう新入社員になるわけですし(笑)
ミ:その方は時期によってはもしかしたら内定が卒業後とかだった可能性もありますね。そこまで粘っておられたのはすごいですね。
ここまで粘るのは大分イレギュラーだと思いますが、再チャレンジが花開いた例ですね。これを聞いて、独学の方で勇気が出た方もいると思います。
業界を目指そうと考えている読者の方向けに、全体的な募集職種と採用フローを教えてください。
田中氏:新卒の場合ですが、こんな感じの流れになります。
■採用フロー
1)履歴書・作品選考
2)面接
3)可能な場合は一定期間アルバイトやインターン
※遠方だったりする場合は、必須ではありません。
遠方の方は純粋に応募作品で判断します。
4)内定
■募集職種
①キャラクターモデルアーティスト
キャラクターや服、装備、乗り物などのモデリングをする仕事です。主なDCCツールはZbrush、Mayaです。
②アニメーション(モーション)アーティスト
主にキャラクターのアクションを手付けで作成します。主なDCCツールはMaya、時々MotionBuilderです。
③エフェクトアーティスト
炎や氷、衝撃波、ビームといったゲームで使うエフェクトを作成します。主なツールはCascade、BISHAMON、PopcornFX、インハウスツールです。
④ゲームプログラマー
ゲームロジック全般、キャラクタ制御、各種UI、シェーダー、AI、物理演算等のシステム作成などを本人の適正に応じて担当します。
ハードはPS4, XboxOne, Switch, Next Platform等です。
⑤ゲームプランナー
企画書や仕様書の作成、レベルデザイン、スクリプト、パラメータ調整などを適正に応じて担当します。
※特に新卒などの場合、業務を通じて習熟していくことになるので、ご応募時点では「書いてあるツールをすべて習得済である」必要はありません。
田中氏:この選考の中でも、インターンはどちらかというと専門学校等で2年制や3年制の方のような、4年制に比べてかけられる時間の問題でどうしても作品だけだと不利になる方の、潜在能力を見るためにやっている感じです。
応募、入社時点では作品が揃いきっていなかったりして、最初は少し時間はかかるかもしれないけど、努力して技術力を上げていける人を探しています。
ミ:将来性伸びそうな人を見るためにやっているわけですね。
田中氏:ええ。
ただ、この後ご紹介する大阪出身の新卒は、3年制の学校で作品をきちんと完成させて応募してきているので、遠方でインターン無しでも作品が良ければ大丈夫です。
ミ:ありがとうございます。
ちなみに、これは自分が自社で企画選考を見ているので、個人的な質問でもあるのですが。
プログラマーやデザイナーは技術面の能力がすごくわかりやすいと思いますが、プランナーの方の採用はどう判断されていますか?
書類だけだとその応募者の方の性格的・考え方の良い特性の部分が把握しづらいこともあって、基本一度はやり取りをすることで対応していたりはするのですが……。
田中氏:わかりにくいですよね。なので、プランナーは特に作品合格した後にアルバイトやインターンをお願いしてます。
ミ:なるほど! 会社に来ていただいている間に直接能力を見るんですね。それは合理的ですね。
田中氏:実際に社内でコミュニケーションなどがうまくできるかとか。そういうのも見ます。
先ほどの大阪出身の彼の場合、選考の時に出してもらったチーム制作のゲームの出来がよかったのもあるのですが、応募書類の中に自分がそのゲームを作るときにどんな役割を担っていたかなどがきちんと書かれていたんですよね。
面接の時に、「どうしてその役割を君が担当したの?」とか「この部分はどうしてこういう動きにしたの?」とかいくつか質問を投げてみて、そのキャッチボールの答えがこちらが想定していた内容と一緒だった、というのも採用の決め手でした。
ミ:ゲーム自体の構造というか、遊びをどう把握していたかも含めて面接の時に確認してみたわけですね。
こういう、企画書が良さそうに見える、以外の部分は実際会話でやり取りができるか、見ておられるんですね。
――――POINT
インタビューで出たのはプランナーの事例ではありますが、面接の時に多くの企業では「ゲームの面白さ」をどう取られているか、遊びの仕組みが説明できるかなど聞かれることがあります。
職種によって技術の部分の判断の比重が大きい職業もありますが、職種にかかわらず、「どんなゲームが好き?」と聞かれた際、そのゲームの面白さの理由となる部分を考えて、人に伝えられることも大事です。
プロジェクトには専任のPMスタッフを置く!
ミ:コンシューマーゲーム開発の特徴として、もともと昔から開発ボリュームは大きいものだったとは思うんですけど、今だとPS4とかSwitchとか……ハードがいっぱいあって、発売日をなるべく同時期にしたいとかで並行開発しないといけないことも多いと思うんですが、そうなるとさらにまたボリュームもぐっと増しますよね。
この辺りをきちんと最後まで作りきるための意図もあると思うのですが、事前のアンケートで「プロジェクトマネジメントの部分にかなり気合入れてやってます」、とあったんですが、具体的にどういうところに気を付けていますか?
▲社員同士でプロジェクトのタスクの整理等の打ち合わせ。
田中氏:よくあるパターンとしてはリーダー職の方がプロジェクトマネージャー(以下PM)を兼務するというのがあると思うんですが……。
ミ:……ありますねえ。
プロジェクトの規模にもよるので、兼任が一概にダメなわけではないと思うのですが、デザインだったり、プログラム、企画など各リーダー職の人は本人も作業を持ってしまっていることが多いので割と大変なことになる印象があります。あとはPM業務のほうが片手間になってしまったり……。
田中氏:本人のパンクや交通整理不足もあるんですが、リーダー職がPMを兼ねてしまうと、チーム内のことは良く気づくけれど、プロジェクト全体の事が気づきづらいという問題があります。
例えばモーション作業の一部分が1週間遅れた。モーションチームとしては、後で取り戻すから大丈夫と判断したが、実はその影響でプランナーのアクション設定作業が遅れる事になってしまった。とかですかね。
ミ:とても想像がついてしまいますね。
田中氏:うちだと、今までは僕がPMを専任で見てましたが、最近もう1名入れて2名体制でプロジェクトを見るように強化し、僕たちPMは直接の作業は持たないようにしています。
リーダーがPMを兼ねるとデザイナーは後で遅れを取り戻すからとか自分のチームの中でよければそれでよしになっちゃうんですよね。でも、期日通りにゲームが完成しないとダメなので、チームがどうこうではないんですよね。
ミ:そうですね、とてもそう思います。ユーザーさんからすれば完成してないと遊べない状態になっているのは変わらないので、チームとか誰かのせいとかそういう問題ではないですね。
ゲーム業界だといろんな職業のとらえ方はありつつ、ゲームの面白さに対して責任を持つ「ディレクター」は多いのですが、プロジェクト全体の完遂を目的としている「PM」はもともと少ないですし、新しくはいられたそのPMの方も重要な役割ですね。
その方がPMになったきっかけって何ですか?
大体若い方にお話を聞くと実際手を動かす開発者になりたいとか、プロデューサーとかディレクターに将来なりたいという人は多いと思うのですが、PMになった方は珍しいのでお聞きしたいです。
田中氏:彼は、小森君というのですが、中途入社です。今の仕事をするまでに、いろんな職業の経験があるようですね。
ゲームセンターの店舗のスタッフをやったり、ソーシャルゲームのカスタマーサポートで企画提案をしたりとか、それ以外にも熱帯魚屋さんにいたりとか、いろいろ。
その中でご縁があって、適性を見てお願いした感じです。
▲代表の田中氏(左)と小森氏(右)。
ミ:ゲーム系のカスタマーサポートから、熱帯魚はすごい幅ですね。
ちなみに、直接開発現場から上がってきてのPMじゃなく、別系統からきてPMだと、開発のことでわからないこともあって戸惑うこととかもあったりするんでしょうかね?
田中氏:そう言うわからないことへの戸惑いなども沢山あると思いますが、そこは、僕が後ろで支えています。
まだPMとしての小森君はまだ仕事を始めたばかりではありますが、それでも彼がいることで、細かいスケジュール調整まで目が届いたり、チームの負担は彼がいてくれるおかげで相当楽になっていると思います。
ミ:物を作る側の人は自分の目の前のものを作る仕事に集中していれば、何か問題が出た時にはきちんと報告さえすれば、調整してくれる人は別にいるわけですものね。
その前後の、物を作る以外のことに煩わされないのは非常にありがたいと思います。
そうするとリードの人たちは技術的な解決に対しては責任は持たないといけないけど、プロジェクト的な解決に対してはPMに相談ができるようになるんですね。
田中氏:そうですね。
例えばガントチャートの修正とか1個ズレると全部ずらさないといけなかったりして維持・管理が大変だったりするんですけど、そういう細かいお仕事も基本PMの彼がきちんとやってくれますね。
ミ:個人的にはどんな便利ツールを使っても、管理に人を割いておかないと最終的にグズグズになってしまうのが身に染みているので、その部分をお願いできる人がいるのは心強いですね……!
――――POINT
「プロジェクトマネジメント」、それを行う人を「プロジェクトマネージャー(PM)」と呼んだりするが、ゲーム、ITなどだと一般的に「プロジェクト全体の進行を完遂させること」に責任を持つ立場の人です。
その会社の文化によっては進行管理と呼ばれていたり、ディレクターや各パートのリードがその役割を兼務していたりすることがあるため、PMとして別個で置いている会社もあれば、PMという役割を置いていない会社もあります。
イリンクスの場合は、計画的にプロジェクトを進め、何より安定して制作に打ち込めるようにするためにも管理・マネジメントすることを重視しており、そこで専属のPMを置いています。
ゲームを作る現場において、プロジェクトの完遂の観点から何か課題が発生した時、各パート間の交通整理や作業のスケジューリングから、ものが足りないときには手配をしたりとチームを円滑に動かすためにいろんなことをするので、かなり仕事内容は幅広く、現場の動きによく気づくマメさが必要な仕事です。
続けて入社後の様子や、実際に勤務している社員の声をインタビューした 本記事の後編は
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2019年版【目指せゲーム業界】イリンクスの社長にインタビュー!【後編】