ゲーム発売時に少し内容の違う同名タイトルが2種類発売されることってありますよね。
元を辿ると、1996年に発売された初代「ポケットモンスター 赤・緑」がこの形式で発売されました。「ポケットモンスター 赤・緑」は、ゲームシステムや基本的なストーリーは同じで登場するポケモンの一部が異なります。ポケモン図鑑を完成させるためには、違うバージョンにて入手できる通信でポケモンと交換をしないといけないという仕組みにより、ソフトの売上が伸び、大ヒットに繋がったという背景があります。
2バージョンでの展開によるメーカー側のメリットは下記のようなものが考えられます。
- ゲーム進行上、別バージョンと連携により大きな恩恵を得られる事にすることで、片方のバージョンの使用者から、もう片方のバージョンへの需要を高めることができる
- ユーザー間でのコミュニケーションの促進がしやすく、話題にしてもらいやすい
- 結果的に2バージョンとも購入するユーザーが見込め、顧客単価を高めることができる
- 基本的な開発コストはソフト1本分+αで済むため、ソフト2本を開発するよりも効率が良い
また、この2バージョン展開のソフトは、ユーザー側にもメリットがあるように思います。
- 兄弟姉妹でゲームを遊ぶ場合、普通なら1本だけ買って交代に遊ぶよう促される事が多いが、バージョン毎に1本ずつ購入してもらいやすい。また、2本購入することで喧嘩にならないようにでき、コミュニケーションのきっかけにもできる
- 既に片方のバージョンをプレイしている友人と別のバージョンをプレイすることで、相互に需要が生じるため、コミュニケーションが生まれやすくなったり、ちょっとした優越感を感じることができる
このようなメリットもあり、初代ポケットモンスター以降、現在に至るまで様々なタイトルで同様の販売手法が採用されるようになりました。こうしたゲームの事は俗に
「ポケモンフォロワー」と呼ばれています。
今回は、そんな2バージョン展開にて発売されたタイトルをご紹介していこうと思います。
ポケットモンスター赤・緑(1996年2月27日発売)
言わずと知れたポケットモンスターシリーズの記念すべき第1作。バージョンによって出現する一部のポケモンが異なっていたり、通信交換によって進化するポケモンがいたりと、ゲームボーイの通信ケーブルを必須アイテムに変えた作品。その後も一部のスピンアウト作品を除いては、最新作のソード・シールドまで基本的にすべてのシリーズ作品が発売時に2バージョンで展開されています。
メダロット カブトver・クワガタver(1997年11月28日発売)
「コミックボンボン」にて連載されていたメダルによって機動するメダルロボット『メダロット』の漫画を原作としたRPG。バージョンによって主人公機が異なり、手に入るパーツやメダルが異なります。また、通信対戦ではメダルを奪ったり、パーツを交換で変化させたりすることができました。独自の世界観から、ポケモンフォロワーでありながら、長くシリーズ化されているタイトルになっています。
サンリオタイムネット 過去編・未来編(1998年11月27日発売)
サンリオキャラクターが多数登場するポケモンライクなRPG。”時のかけら”と呼ばれるモンスターを集め、育て、戦わせていきます。いわゆるサンリオキャラクターズはそれぞれの設定によって基本的にはNPCで登場しており、時のかけらのほとんどはゲームオリジナルのサンリオキャラとして登場しています。こちらもバージョンによって登場するキャラが異なり、通信によって対戦、交換、進化などの要素が入っています。
ロボットポンコッツ 星ver・太陽ver(1998年12月4日発売)
ロボポンと呼ばれる野生のロボットを捕獲、育成して戦わせるRPG。こちらも「コミックボンボン」で漫画化もされていました。こちらもバージョンにより出現するロボポンが異なり、通信による対戦や交換が可能。大きな違いとしてはゲームソフト自体に赤外線通信機能が搭載されており、通信ケーブルを使わずに通信することが可能な画期的なソフトでした。
王ドロボウJING エンジェルver・デビルver(1999年3月12日発売)
こちらも「コミックボンボン」にて連載されていた漫画を題材にしたRPG。バージョンによって一部のモンスターやイベントが異なり、通信による対戦や交換はもちろん、通信によって入れるようになるダンジョンなどもありました。
携帯電獣テレファング スピードver・パワーver(2000年11月3日発売)
携帯電話を題材にしており、電獣の電話番号を聞き出し、対戦時に呼び出して戦わせるという独特な設定のRPG。ちなみにこちらも「コミックボンボン」で連載されていました。2バージョンで出現する電獣が異なり、図鑑完成のためには、やはり通信が必須になっているタイトルです。
真・女神転生デビルチルドレン 赤の書・黒の書(2000年11月17日発売)
アトラスの「真・女神転生」シリーズの派生作品となる通称「デビチル」。こちらも「コミックボンボン」での漫画化やアニメ放送等のタイアップがありゲーム化している作品。こちらもバージョン毎に出現するデビルや悪魔合体の内容が異なり、通信によって対戦や交換ができるようになっています。
ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章・時空の章(2001年2月27日発売)
カプコンが中心となり開発をおこなったゼルダの伝説。基本的なゲームシステムや登場人物等は共通しているものの、マップやダンジョンがバージョンによって異なります。通信ケーブルを使わずに合言葉を使えば相互に影響を与えることができるリンクシステムの他、通信ケーブルを使ってアイテムの交換ができるようにもなっています。
ドラゴンクエストモンスターズ2
マルタのふしぎな鍵 ルカの旅立ち・イルの冒険(2001年3月9日/4月12日発売)
前作「ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド」では1バージョンのみでしたが、本作は2バージョンにて展開。バージョンにより一部の登場モンスターが異なっています。発売直前に「イルの冒険」に不具合が発見されたため、発売が1ヶ月ほど遅れましたが、元々は同時発売予定だったタイトル。前作にもあった通信を使った対戦やお見合い等の要素もしっかり引き継がれ、新たに強力して敵と戦うモードが追加されています。
基本的に2バージョン展開で発売してヒットしたタイトルは、ゲームシステムを踏襲した上で、次作以降も同じように2バージョンでの展開でシリーズ化しています。しかし、何でも仕組みだけ真似をしても上手くいかないというのもゲームあるあるで、消えていったタイトルもあります。ゲーム性はもちろん、別バージョン連携の必要性、一定のプロモーションなどもしっかり行わないとヒットはしません。
特に2バージョン展開の場合は、「周りが誰も遊んでいないのに片側だけ持っていても仕方がない」、「自分で2バージョン揃えるのも面倒」と、逆に売れない理由になってしまうこともある諸刃の剣の販売手法。ゲームシステムと販売手法、プロモーション等はこの販売手法に限らず大事なもので、それがしっかりできているタイトルは現在でも長くシリーズ化がされているのだと思います。
また、初代「ポケットモンスター」販売直後に出てきているポケモンフォロワータイトルの多数が「コミックボンボン」原作のタイトルであることがわかります。ポケットモンスターが「コロコロコミック」で連載されており、すぐに追随したタイトルは主要ターゲット層が同じである「コミックボンボン」での連載を経てゲーム化の流れをとっており、「ポケットモンスター」だけでなく「コミックボンボン」側が「コロコロコミック」を強く意識していたようにも感じられます。
このように現在では当たり前となった2バージョンによる販売手法も元は初代ポケットモンスターの大ヒットがきっかけであり、現在のスマホゲーム等でも見られる、他プレイヤーとの対戦や交換、コレクションなどもポケットモンスターをヒントにしているケースもあると思います。世代を超え、「ポケットモンスター」はゲーム業界に影響を与え続けており、改めてポケットモンスターの偉大さを実感させられます。
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