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[取材]出張ヒストリア! UE4東京勉強会 登壇レポート②「アーティスト1人×1ヶ月編!」

2016-07-27 18:22:00
VRエンターテインメント研究施設「VR ZONE Project i Can」にて絶賛稼働中のロボに乗れる(!!)VRコンテンツ「アーガイルシフト」のプログラム実装や、今夏「SPACE PENGUINES」、「Knight Flight」の2タイトルのリリースを控え、ビッグウェーブにノリにノっている株式会社ヒストリア。
株式会社ヒストリアが主催する【7/18(祝)】出張ヒストリア! UE4東京勉強会 のレポート、アーティストの部!

過去記事はこちら→
[取材]君もゲーム開発にチャレンジしないか?【7/18(祝)】出張ヒストリア! UE4東京勉強会 に行ってきた!
[取材]出張ヒストリア! UE4東京勉強会 登壇レポート①「新人プランナーの挑戦編!」

 

 
目次
 

「アーティストが入社一ヶ月で一人でゲームを作ってみた。」

こんにちは、UE4登壇シリーズではおなじみ、裏ワザでゲットしそこねたのでピカチュウを探しに行きたいものの会社を離れる時間がなさそうな編集部公式居候のミツヅノです。
普段はゲーム業界で運営・開発のお仕事の営業(?)みたいな仕事をしていますが、そんな目線から今のゲーム開発事情に絡む勉強会の様子をお届けする出張ヒストリア、今回は2つ目アーティストの部。

ヒストリアの自社開発プロジェクト、Colorsでは「他のスタッフを巻き込むのはOK」なのだが、今回黒澤氏はもともと「ぷちコン」に一人で制作をしたゲームを投稿していたことも有り、一人で「Knight Flight」(iOS/Android事前登録受付中)をやる流れに。
 
▲他のColorsで開発されたゲームたち。
今後もきっと増えていくことだろう。


今回、プログラムパートもデータ設計もエンジニアやプランナーの手を借りず、開発期間が一ヶ月なので、モバイル(スマホ)で作りやすいものをベースに考えていったという。

これまたスライド内にあっさり書かれているが、「規模の調整しやすさ」はゲームにかぎらず、作っているものを完成させることを考えると大事な部分である。
発想がどんなに面白そうであっても、始まりと終わりがあって完結しているものでなければ基本的に市場にでることはないので、商売やお仕事としてのゲームを考えた時に、完成させて人に遊んでもらうことが何より大事なのだ。


「Knight Flight」は古典ゲームである「チェス」のナイトの動きを取り出して、ゲームのコアの面白さとして作りこんでいっているところが特徴だ。
もともとの仮タイトルは「チェス無双」。
 

▲耳がぴょこんと出たナイトが、画面上を飛び回るようにして敵を倒していく。
 

コンセプトは「一人で大群に勝てるチェス」だ。
 

▲古典ゲームを題材にしたところも一つのポイント。
いろんな企画の作り方があるが、今回の黒澤氏は、切り口を変えて遊びを追求する方法をとっている。


ゲームの概要としては、ターンベースで敵が動いてくるので、その間にプレイヤーのキャラクター(ナイト)を使い、障害物を飛び越えて敵の上にジャンプして攻撃し、敵を殲滅していくというもの。
敵はターンベースで動くが、プレイヤーはなんどでも動けるので、テンポよく敵を殲滅して片付けていく感じになりそうだ。
 

▲敵は踏んで倒す。
「敵の目の前に落ちるとダメージ」で踏み損ねたクリボーで倒された幼少期を思い出した。
 

実際の制作の進め方

通常の(ある程度の規模の)開発だと、

「キャラクターの見た目を作る」のは3Dモデラーの役割、「キャラクターやゲーム内のオブジェクトを動かす」のはアニメーター(モーションデザイナー)、「それを組み合わせてゲームに実装するのはプログラマー」、「強さの度合いを決めるのはレベルデザイナー、企画(プランナー)」

……さてここまでも結構な数の登場人物が出てくるが、大規模開発だとこれが更に分かれていて「キャラクターの中でも人間だけ作る人、モンスターだけ作る人」「マップだけひたすら作ってる人」……という、同じ職種の中でも細分化が起きたりするのだ。

そのことにひたすら専念できる、というメリットももちろんあるが、「他のパートがどうやって、何を考えて作っているか」を場合によってはあまり深く触れる機会がないままスペシャリストとして専門化が進んでいくようなケースもある。この辺は開発するゲームの種類に応じた良いやり方や、会社や開発チームの特色もあるので一概にどれかだけが正解というものではないが、人がたくさんいるようなケースだとこういう作り方もある。

UE4を使いこなすことで、ヒストリアの場合は一人ひとりの社員がゲームに対する個性を発揮し、コンパクトな体制での開発を進めているが、今回は特に動きや見た目の部分の可愛らしさや気持ちよさを担保しつつ、素早く作っていくところにUE4が一役買っていたようだ。
 

▲UE4エンジンは、プランナーだけではなくゲームに対してアイデアを持っている人が動作を手軽に試せるのだ。


実際には作った後、細かな調整も何度か行っているようだが、「思いついたものを試す」までの時間はやはり短く済ませられることがメリットとなっている。


▲ここも、UE4の「ブループリント」で実装されている。
ほぼプログラムを書く必要が無い(!!)という。

 
※ブループリントとは、UE4上でゲームの処理を組んだり、3Dモデルなどのゲームデータを制御するためのスクリプトである。
物を動かしたり、ある条件の時に動きを変えたり、消したり、カメラ効果だったり応用することで様々なゲーム内の動きが制御できるという。


スライドの参考情報[UE4] コンポーネントを使ってワープさせてみる はこちら。

その他にも、「チェス」を遊びのベースにしながらもプロト段階から、敵の動き、キャラの見た目の調整なども進んでいく。
キャラクターに関しても、当初デザインだとナイト(騎士)なのでその名の通り剣を所持していたわけだが、「剣持ってるのに敵を倒すのに踏むの?」→「剣を持っているとどうしても斬りつけたくなる」としっくりこなささが出てきたようで、剣を持たないキャラデザに修正したのだという。


▲「剣があるかどうかって大事?」
大事! 「納得感がある」もゲームの中では大事なのだ。


最後に、本来の黒澤氏のメイン領域であるアートの部分。
今回、「一番よくわかっている部分なので後周りにして、優先したのがゲームの遊び方の部分であった」ということ。逆に言うと、一番良くわかっていて作るのにもなれてはいるものの、アート部分は一番作るのに使える時間が少ない中でクオリティを担保しなくてはいけないということだ。
また、3Dキャラクターやステージ作成の部分で、プログラムとアート、プランナーで役割が分かれているとその時点では「ゲーム性(ゲームの面白さ)」が確立されていなかったり、どんなゲームかの細かい説明がない状態で「キャラクターのデザイン仕様(どのくらいのサイズで、どの程度の動きがつけられる想定で…)」だけが発注されることもあるが、「モデラーには関係なさそうだけど、わかっていると(そのゲームらしい)いいものができる」部分だという。
 


▲ゲームの仕組みは完了。
ここからは見た目のらしさを作っていく。

 

デザイン部分の制作過程を見ていこう。
「どんな内容のゲームなのかモデラーに伝わっていたほうがいいものが作れる」というところで、今回は全部黒澤氏が作っていることもあって「ゲームの設定」がしっかりとデザインに反映され、「Knight Flight」らしいデザインができていっているのがわかる。

マップの形によっても「見下ろした時に分かりやすいデザインであること」からワニのように鼻先が尖っている敵が設置され、更にそれに対応する形で(ワニに襲われる感じの動物)ナイトがうさぎをベースに制作されていっている。
 



▲チェス盤のような市松模様。
2種類の床素材をジグソーパズルのように並べている。



▲実は、この床の配置もUE4で実装しているのだ。
 

この辺りの手動で設置すると手間になる部分の床のパネルの配置も、チェス盤な市松模様はUE4のConstructionScriptの機能で制御しているそうだ。
 

▲横棒が3Dモデルの製作時間。
これの青色部分を思い切ってカットするのだ。


さらに、「モデル作るのにかかる時間はモデリング4割、UV・テクスチャ4割、それ以外が調整」だという。
漠然とテクスチャの作成にも時間がかかるんだろうな、と想像はしていたが、テクスチャは3Dモデルに対する精密なぬりえのようなものなので、ゲームの中に出てくるものの複雑な色味を考えるとモデリングと同じくらい時間がかかるのもうなずける。
商業レベルで作ると、ローポリ(低ポリゴン)でも「テクスチャ製作時間大きい」のだ。
今回は、その4割かかっているという「UV・テクスチャ」の製作時間をカットする工夫を行ったという。
 

■3Dモデルって?
イラスト等で表現される平面のものを2D、アクションゲームのキャラクターなど、ポリゴンの組み合わせで立体的に表現されるものが3Dというところまでは多くの方がご存知だろうと思う。一昔前は3Dモデルはパッと見で明らかにそれとわかるくらいカックカクの見た目をしていたが、最近は映画に取り入れられたりするくらいで、普通の立体物と違和感ないレベルのものも出てきている。
そんな美しい、「なめらかに見える3D」は細かく細かくポリゴンと呼ばれる「面」を割り、その面を密集させて形を作っていくことでなめらかに見せたりしている。また、ゲーム内で照明を当てた時に、モデルに綺麗に陰影がつけられるようシェーダーと呼ばれる機能で、陰影の調整で作りこんでいっているので、非常に時間が掛かる。

さらに、3Dモデルはただ作っただけだと全く動かないので、髪の毛やマントなどをなびかせたり、キャラを動かしたりするためにはアニメーションを付けるための設定が必要になってくる。
UE4の場合、これらの操作を基本的なものであれば、UE4上であらかた出来てしまうところがアドバンテージとなっているというわけだ。

モデリングはポリゴンを割って3Dモデルの形そのものを作っていくことだが、テクスチャという「精密なぬりえ」は、モデルに貼り付ける色の部分となる。
モデリングで物の形を取っていき、テクスチャで色みや陰影、モデルの色、透明度や凹凸などを書き込んでいくのだ。
UVは、UVマップと呼ばれるが、そのテクスチャをどういう形でモデルに貼り付けるかの座標情報を指定しているのがUV「マップ(地図)」だ。

元の状態のモデルには何の色もついていないので、ゲームの中の美少女の唇が赤いのも、頬がほんのりピンク色なのも、瞳が吸い込まれそうな輝きをたたえているのも、モデリングももちろん、この色味や陰影の調整をアーティストのたゆまぬ努力で作り上げているからこそと言えるだろう。

こういった技術が、ゲームのキャラクターたち(だけに限らないが)にイキイキとした表情やきらめきを加えているのだ。
 


そんなわけで、テクスチャ(色身)部分の作りこみを最低限にするため、モデルは「低ポリ+全て各モデル最大4色しか使わない」という縛りで制作を行っている。これが適度なハードエッジと呼ばれる固さのある形のモデルとマッチして、独特の可愛らしいキャラクターやマップに結び付いているといえる。


▲少ない工数で世界観に馴染むように作られている。


ここでもUE4の機能で「マテリアルエディタ」と呼ばれる3Dモデルを編集する機能で見た目の調整を行っていたという。

実際にゲーム内に配置した3Dモデルを選択して、色や効果(金属調のメタリックや光の加減などもダイレクトに変えられる)の編集がその場でできるのだ。
やはり細かい調整はMayaやMaxなどの3Dモデル制作ソフト上で行われることも多いと思うが、ローポリでこういうテイストの場合、いちいち元の3Dモデルからいじり直したり書き込みを加えるのではなく、ゲームエンジン上で処理が済んでしまうのは大きなメリットなのだろう。

今回の場合はアーティストの黒澤氏が最初から最後まで制作を進めているが、細かい気の利いた調整はできないかもしれないが、「おいてあるものの色をとりあえず赤から緑にしておく」程度であったり、ただ効果をつけるだけであればアーティスト以外の職業でもいじる箇所がわかれば触ってみることは可能そうである。

そして、もう一つ。

前回の「SPACE PENGUINES」でもペンギンやロケットなどの動きをブループリントの機能でつけていたりもしたが、キャラが跳ねるモーションもUE4の機能で基本的な部分はつけているのだ。
 

▲MayaとUE4の組み合わせでジャンプの動きをつけて可愛くしている。


例に上がったのはプレイヤーが操作するナイトの動きの部分。
ナイトはうさぎをモデルに作られているので、動きも「跳ぶ、跳ねる」ことを意識して作られている。お見せできないのが残念ではあるが、ゲーム動画を見る限り気持ちの良いジャンプを繰り返しつつ敵を倒していく。
通常だと、アニメーターに動きをつけてもらってゲームに組み込む部分も、ここも基本はブループリントの機能を使って実装したという。

ただ跳びはねるだけのジャンプのモーションはUE4上のTimeLineで作成し、3D制作ソフトのMayaでジャンプ中の細かい宙返りを作成し、両方の動きのレイヤーを重ね、Timeline側のレイヤーをミュートすると……

宙返り(Maya)+ジャンプ(Timeline)=宙返りジャンプ

というキャラの動きが完成するのだ。

最後のゲームとしての小気味よさや仕上がりの良さを分かつのは、黒澤氏がもともと職分としているアーティストとしての腕の部分の「動きや見た目のディティールをつけられるか」であったり、前回の久保氏のプランナーとしての「遊びの面白さをいかに調整できるか」であることが大事な部分ではある。

しかし、アーティストにかぎらず、プランナーやプログラマーが何かアイデアを思いついて試したいと思った時に、「それ風の動き」までなら基本機能でカバーされているのはゲームエンジンとしての良さだろう。
その後、何人かのチームで分業する場合でも他の職種の人間が具体的なイメージを持って制作に入れるし、そのまま自分で作りこむ場合にはその後細かいぶんのブラッシュアップを続けていくこともできる。
高機能なツールで、なまじなんでも機能が入っているようなものだと、素人目には一見通が効かなさそうな感じもするのだが、エンジンの使い方次第でこういった細かい調整もできるようになっているので、その人の技量や制作の状況にそれぞれあった活用の余地があるように感じた。
 

まとめ

「Kight Flight」がリリースされるまでにはまだもう少しかかるようだが(夏中らしい)、制作を行ってきた黒澤氏による制作のまとめがこう締めくくられていた。

通常だと分業されているところを一人で回してみることで、従来はアーティストの作業領域ではなかった部分に触れて「できるようになっていたほうがいい」と感じるところも多かったようだ。
またワークフローは各セクションでオーバーラップしている必要があり、オーバーラップの「のりしろ」が狭すぎると業務がうまく流れないこともある。
特に、「シェーダー」については以前まではエンジニアの領域とされることが多かったが、UE4などエンジン上で調整できるようになってきていることも有り、黒澤氏自身はアーティストの領域として考えているという。

職業上、自分ができること以外の部分も少しは足を突っ込めるようになっていた方が融通が効くのでは、とも語っていた。

 



▲こんな制作経緯をたどってきた「Kight Flight」、事前登録を受付中!


例によって長い記事になっているが、少しでも制作が便利になっている様子が伝われば嬉しい次第だ。

黒澤氏はヒストリアのUE4ブログでも [UE4] コンストラクションスクリプトでお手軽にプロシージャルなアクターを作る 「Kight Flight」の例ではなく、謎のねこちゃんで技術記事を書いてもいるので、もっと深く内容を知りたい方はぜひ合わせてご覧いただきたい。
 

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次回は「ブループリントを書くにあたって大切なこと ~たったひとつのシンプルな答え」
エンジニアでレベルデザイナーでもある馬場氏の登壇のご紹介となる。

その他、UE4関連過去記事はこちら→

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[取材]出張ヒストリア! UE4東京勉強会 登壇レポート①「新人プランナーの挑戦編!」

それではまた次回!
 
ライター : ミツヅノ
不定期にゲームの紹介記事や、特集系の記事で出現する「ミツヅノ」です 普段はスマホのゲームを作ったり運...
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